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亜桜 美羽(あさくら みう)です。
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『夜愁』

 リハビリ、リハビリ……ということで、久々に読了本の感想でも書いてみる。例のごとくネタバレありの方向で。

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『夜愁』 著/サラ・ウォーターズ

『茨の城』でなんとなくお気に入りになって衝動買いしたものの、引越しやなんだで積読になっていたかわいそうな(?)作品。
 あらすじは……と書くこと自体に若干無理があるかもというぐらい、明確なストーリーラインがない(カタルシスに繋がるような出来事が起こらない?)作品ではあるんですけど、それでもあえて書くとしたら、戦時中および戦後のロンドンを舞台にくりひろげられる群像劇って感じでしょうか。
 第二次世界大戦後である1947年、ある人物は一人屋根裏部屋で暮らし、ある人物は不倫相手との空しい恋愛に疲弊し、ある人物は同居している恋人への嫉妬心に苛まれ、ある人物は家族の下をはなれて血も繋がらない人物と同居し……と各々の生活を送る彼らに垣間見えるのは、戦時中の出来事によって負わされた何らかの心の傷。
 構成自体は、1947年からスタートし、44年、41年と遡る形で描かれているため、最終的には彼らが負った心の傷の正体はわかります。……わかりますが、『茨の城』や『半身』のような劇的な展開を期待して読むとおそらく肩透かしを食らいます。
 はい、まさに私がそうでした orz。いや、だってミステリーコーナーにあったらそう思うじゃないですか。
 ただ、そういう目的で書かれた作品ではないんだと割り切ってしまえると、これはこれで味わい深い作品なんですよね。

 戦争直後には一人で暮らしているケイと、恋人関係にあるジュリア&ヘレンの三人(ちなみに三人とも女性)は、戦時中はケイ&ヘレンのカップルとその友人という関係にあったのが、ヘレンが心変わりをしてジュリアとくっついてしまうわけです。でも、そうやって恋人を裏切って別の女性とくっついてしまったヘレンも、三年後には裏切られるかもという疑心暗鬼に苦しめられるわけですから、何とも黒い。

 また、戦後には足の悪い老人と同居生活をしている青年ダンカンは、戦時中に戦争に対する抗議活動の一環として、友人と二人で心中を図るわけですが、結果的にはダンカンだけが生き残ってしまいます。それだけでもヘビーではあるんですが、そこに同性愛がからんでくると何ともダークで妖しい世界といいますか。
 刑務所の二段ベッドの上下で……のシーンがいろんな意味で頭から離れません orz。

 また、唯一のノーマルカップルであるヴィヴとその不倫相手レジーは、戦時中も戦後も変わらず関係を続けているように見えますが、戦時中に経験した妊娠&堕胎のせいで深い溝を抱えています。特にヴィヴは、妊娠&堕胎に直面した際にレジーの本性を目にしてしまったことで、かなり冷めているのに対しレジーは何も気づいていないという温度差が何とも黒い。
 しかも最終的には、堕胎手術で死にかけていたときに関わったケイに惹かれていくのかな? 的なところで終わっているのが、何とも皮肉だよなぁ……なんて思ったのは私だけでしょうか。

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